「今日はきつかった」と感じても、その感覚だけでは前回の練習と比べにくいものです。走る距離や回数が同じでも、睡眠不足や暑さなどによって負担の感じ方は変わります。
そこで使えるのがRPEです。この記事では意味と尺度の違い、記録の付け方、振り返り方を、球技やランニングにも使える形で紹介します。
この記事の結論
RPEは「自分が運動をどれほどきついと感じたか」を数値で示す主観的運動強度です。毎回同じ尺度を使い、練習内容・RPE・体調をセットで記録することで、同じ負荷でもきつく感じた日や無理をしている可能性に気づきやすくなります。
RPEとは?運動のきつさを表す指標
心拍数やタイムではなく、本人の感じ方を記録する
RPEはRating of Perceived Exertionの略で、日本語では「主観的運動強度」などと呼ばれます。呼吸の苦しさ、脚や全身の疲労感、動作を続ける大変さなどを総合して「どの程度きついか」を評価します。
RPEは心拍計がなくても使える一方、同じ数値が誰にとっても同じ運動量を意味するわけではありません。気温、睡眠、体調、習熟度、直前の運動などによって感じ方が変わるためです。
RPEで分かること・分からないこと
- 分かりやすくなること:その日の主観的なきつさ、同じ練習での感じ方の変化。
- RPEだけでは分からないこと:正確な消費カロリー、運動による成果、医学的な安全性、他人との能力差。
- 併記したい情報:種目・距離・時間・回数・休憩・体調など、実際に行った内容。
0〜10尺度と6〜20尺度の違い
RPEには複数の尺度があります。数字の意味が違うため、記録欄に「どの尺度を使ったか」を必ず書くことが重要です。
| 尺度 | 数字の範囲 | 使い方のポイント |
|---|---|---|
| 0〜10の尺度(CR10など) | 0=負担なし、10=最大限にきつい感覚の目安 | 日常の練習記録に使いやすい。尺度の説明を決めて継続する |
| ボルグの6〜20尺度 | 6=非常に楽、20=最大限にきつい | 研究・運動指導でも使われる。0〜10の値にそのまま置き換えない |
どちらの尺度も、番号と感じ方の対応を一定にすることが大切です。異なる尺度の記録を同じグラフで無条件に比較しないでください。
0〜10で記録する場合の言葉の目安
以下は初めて記録する人に向けた簡易的な説明例です。正式な測定用尺度を置き換えるものではありません。指導者から指定された尺度があれば、そちらの説明を優先してください。
| RPE(0〜10) | 感じ方の例 |
|---|---|
| 0 | 休息中など、運動による負担を感じない |
| 1〜2 | とても楽に感じる |
| 3〜4 | ややきつさを感じるが、比較的余裕がある |
| 5〜6 | きついと感じ、集中して続ける必要がある |
| 7〜8 | かなりきつく、長く続けるのは難しく感じる |
| 9〜10 | 非常にきつい〜本人にとって最大級の負担と感じる |
「RPE7なら必ず安全」「RPE8以上なら必ず危険」などの固定的な判定はできません。同じ主観的な数値でも運動内容・経験・健康状態で意味が変わります。
RPEを練習で記録する4つの手順
まずは0〜10の尺度を使う場合の提案手順の一例です。目的が練習全体の負担の把握なら、毎回おおむね同じタイミングで「練習全体としてどう感じたか」を聞き取ります。種目ごとのきつさを知りたい場合は区間ごとにも記録しましょう。
STEP 1|尺度と評価する対象を決める
「0〜10で練習全体を評価する」「区間ごとに評価する」など、先にルールを固定します。練習中の一瞬のきつさと、練習全体の感覚は分けて記録します。
確認点:次回も同じルールで評価できるか。
STEP 2|行った内容を事実として書く
種目、実施時間、セット・本数、休息などを書きます。例えば「ランニング20分」「パス練習とミニゲーム」など、後で再現できる程度の情報を残します。
確認点:数値だけ見ても何をした日か分かるか。
STEP 3|きつさを数値にする
決めたタイミングで「今日の運動全体はどれくらいきつかった?」と自分に問い、感覚に近い数値を付けます。他人の点数や目標タイムに合わせて選ばないようにします。
確認点:思ったより遅く走ったからといって、実際のきつさを低く書き直していないか。
STEP 4|体調と次回の調整メモを残す
睡眠、暑さ、疲労、痛みの有無などを添えます。次回は「休息を長めにする」「同じ内容でもう一度確認する」など、判断の候補を一つ書いておきます。
確認点:RPEの高低だけで負荷を決めていないか。
練習記録の書き方と読み取り例
記録表の記入例(架空の形式例)
以下は書き方の見本であり、誰かの実測データではありません。
| 日 | 内容 | RPE(0〜10) | 体調・メモ |
|---|---|---|---|
| A日 | ジョグ20分 | 3 | 息に余裕。睡眠は十分 |
| B日 | ジョグ20分 | 6 | 蒸し暑く、脚が重かった |
| C日 | ジョグ20分 | 4 | 涼しく、一定ペースで走れた |
同じ「20分」でもRPEが違います。ただし、この例だけで体力が低下・向上したとは判定できません。ペースや環境、休養なども比べてください。
球技・筋力トレーニングでは何を添える?
- サッカー・バスケットボール:ゲーム形式の時間、人数、コートの広さ、休憩時間。
- テニス・バドミントン:打ち合いの内容、移動量が多い練習か、休息の取り方。
- 筋力トレーニング:種目、重量、回数、セット数。なお「あと何回できそうか」を基準にした筋トレ用のRPE運用は別の考え方を含むため、一般的な全身のきつさのRPEと混同しない。
練習全体の負荷を扱う現場では「セッションRPE×実施時間」で負荷の指標を作る方法もあります。ただし計算結果は独自の相対的な指標であり、消費カロリーや生理学的な仕事量そのものではありません。まずはRPEと時間を別々に記録するだけでも構いません。
RPEが高い・低いときはどう判断する?
記録から次の行動を考える
同じ内容なのに、いつもよりきつい
確認:睡眠、気温、前日の運動、食事、水分、体調、実際のペース。
対応:無理に予定を達成せず、休息や練習量の調整を検討する。体調不良があれば運動を中止する。
以前より楽に感じる
確認:同じ距離・時間・速度・条件だったか。
対応:記録を数回比較し、必要なら練習目的に応じて負荷を少しずつ調整する。楽に感じることだけで成果を断定しない。
練習の途中だけ極端にきつい
確認:その区間のペース、動き、休憩、フォームの変化。
対応:練習全体のRPEとは別に区間のRPEを記録し、負荷配分を見直す。
低いRPEなのに動きが不安定
確認:技術的な難しさ、注意力、痛み、フォーム。
対応:きつさだけでは解決しないため、動作や練習条件を別に確認する。
RPEを使うときの注意点
数字より安全と体調を優先する
- RPEは主観による記録であり、医学的な検査や緊急時の判断を代替しません。
- 暑い日や体調が悪い日は、設定した数値に合わせようとして無理をしないでください。
- 胸の痛み、めまい、異常な息苦しさ、強い痛みなどが出たら運動を中止し、必要に応じて医療専門家に相談してください。
- 未成年者、持病がある人、運動制限を受けている人は、個々の状況に応じて指導者や医療専門家と運動強度を検討してください。
次回の練習で行うこと
- 記録欄に「RPE 0〜10」と明記する。
- 練習の種目・時間・主観的なきつさを書く。
- 睡眠や暑さなど、当日の条件を一言残す。
- 似た練習の記録と比べ、負荷や休息を変える必要があるか考える。
最終結論|RPEは練習のきつさを振り返るための記録
RPEとは、運動のきつさを本人の感覚から数値化した指標です。0〜10尺度と6〜20尺度を混ぜず、評価対象やタイミングをそろえて継続することが大切です。
最終結論
RPEの使い方は「同じ尺度で感じたきつさを付け、練習内容と体調を一緒に残す」ことです。まずは次の練習から、種目・時間・RPE・その日の一言メモを記録しましょう。数字だけで良し悪しを決めず、似た条件の記録を比較して次回の負荷や休息を考えることが実用的な活用方法です。